『それは反則』



「う……ん……」
 隣で眠る夏見さんが身動ぎし、私は眠りから目を覚ました。
 寝息と共に耳に届く微かな声。うなされているのかと思いきや、スタンドの灯りの下、彼女は正反対の穏やかな寝顔を浮かべている。
(……いい夢でも見ているのかな)
 彼女のことだから、子供の夢か甘いものを食べている夢でも見ているのだろう。
 どちらにしろ、気持ち良さそうに眠る彼女の寝顔に安堵し、再び眠りに就こうと目を閉じようとすると、ふいに声が届いた。
「どう…じまさん……」
「…………夏見さん?」
 驚き、問い返すように彼女を呼ぶ。だが、返事は返って来ずに幸せそうな寝顔だけが視界に映る。
 手を伸ばし、そっと触れたなら口元が緩み。
(……もしかして、私の夢を見ているのかい?)
 言葉には出さずそう心で問い掛けた私は、思いがけず感情が溢れ出すのを自覚する。

「夏見さん、それは反則だよ……」

 一人つぶやき、眠る彼女を起こさないように体を寄せ、抱きしめる。
 夢に現れるほど君の中で私の存在が大きくなっているのだと。そう自惚れながら、私は目を閉じた。













お題『それは反則』 (Completion→2009.02.17)


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