『怪我と少女の決意』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
よし、行ける。
一気に三体のヴァグラーを倒し、この流れで最後の一体を――と身を翻して駆け出した瞬間。
「ヨーコちゃん!」
強い力で腕を引き寄せられ、抱き込まれたと同時に数発の銃弾がすぐ側を抜けていく。
「……っ」
顔を顰めたリュウさんが私を離し、イチガンバスターを構えて即座に反撃するとヴァグラーが倒れ、消えていった。
「ヨーコちゃん、怪我はない?」
「大丈夫。それよりリュウさん被弾したよね!?」
ジャケットの上から触れて確認すると、左の腕を怪我したみたいで顔が苦痛に歪む。
「ごめん……」
「気にしないで。これくらい大丈夫だから」
何でもないと笑顔を浮かべるリュウさんに瞬間、心配よりも怒りの感情が先立って私は叫んだ。
「リュウさんのバカ! 全然大丈夫じゃないでしょ!?」
「ヨーコ、ちゃん……?」
目を瞬かせるリュウさんのジャケットを無理やり脱がせるとシャツが血に染まっている。圧迫止血をしながら、私はリュウさんを睨みつけた。
「庇ってくれたのは感謝してるけど、心配くらいさせて。怪我したら痛いんだから、大丈夫なんて強がらないでよ」
お願いだから私の前で平気なフリをしないで。
私の痛みを全部引き受けようとしないで。
リュウさんは優しいけど、いつも笑顔の下で自分を犠牲にしてる。
それが嫌で泣きそうになっていると、リュウさんが私の顔を覗き込んだ。
「確かに痛いけど、ヨーコちゃんが傷付く方が嫌だから」
「でも……っ」
「女の子でしょ。こういう時は守らせてよ……ね?」
柔らかく笑うリュウさんに涙が溢れる。
リュウさんが守ってくれる安心感と、隣に並び立ちたいと願う気持ちで揺れる。
(悔しい……)
今の私はまだ、これ以上リュウさんに怒ることが出来なくて。
何も言えずにいると、リュウさんは私の涙を指で拭った。
「心配してくれてありがとう。それに手当も。ヴァグラーは倒したし、戻ろうか」
止血の手を代わり、シューターに向かって歩く彼の背中を見ながら私は決意する。
もっと強くなって、リュウさんの隣に立てるようになる――。
いつまでも守られる存在じゃなくて彼を守れるようになりたい。
涙を拭いて、私は歩き出した。