『無意識の想い』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
「リュウジさん、この菓子の山はなんですか」
研究室に顔を出したヒロムがデスクの片隅に置いているカゴの中身を覗き、呟く。
「期間限定とか新商品が多いですね」
「そうなんだよ。コンビニとかで見かけるとつい買っちゃってさ」
「けど、自分で食べる用じゃなくてヨーコの為ですよね、コレ」
「……まぁなんていうか、習慣、ってヤツ?」
ヨーコちゃんが好きそうだなと思うと、すぐに手が伸びちゃうんだ。そう返せばヒロムは苦笑した。
「ヨーコの保護者をやめるなんて言ってましたけど、無理でしょ」
「無理……かな?」
「はい」
バッサリと言われて思わず笑う。けどヒロムは真面目な顔をして言った。
「もういっその事、彼氏になったらどうですか?」
「……え?」
「付かず離れずの距離を保とうとして無理なら、踏み込めばいい。それともヨーコはそういう対象として見れませんか?」
真っ直ぐな目に射抜かれて言葉を失う。
どう答えたらいいのか自分の中の答えを探していると、ヒロムは菓子の箱を一つ手に取り、笑った。
「俺は悪くないと思いますけどね。……あ、コレもらっていきます」
軽く手をあげてヒロムは研究室を後にする。その背中を見送って、俺は息を吐いた。
「……否定できなかったな」
血の繋がった兄妹だったら。俺がヨーコちゃんに特別な感情を抱いていなかったのなら、『ヒロムなに言ってるの』と笑って返せたのかもしれない。それが出来なかったということは、きっとそういうことだ。
「そうだな……俺は――」
机の上に常備した菓子。折に触れて自分を訪ねてくる彼女の笑顔を期待する自分。
そう、待っているのだ。ヨーコが自分の元に来ることを。
『もういっその事、彼氏になったらどうですか?』
ヒロムの言葉を思い出し、俺は天井を仰いだ。