『二人のバディ』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ+ウサダ)
「リュウジってほんっとムカつく!」
耳に飛び込んできたウサダの声。リュウジは反射的に物陰に身を隠し、そっと様子を伺った。
最近、ウサダの当たりがキツイとは思っていたが、何か彼を怒らせるようなことをしてしまったのだろうかと聞き耳をたてる。
苛立ったようなウサダに、彼を宥めるヨーコの声が聞こえた。
「リュウさんのこと、なんでそう思うの? 私だけじゃなくてウサダにも優しいでしょ」
「そういうことじゃなくて、ヨーコの事をウサダよりも早く気付きすぎなのが気に入らないの! だってこの前体調を崩した時も顔を見ただけで『ヨーコちゃん、熱あるでしょ』って。触ってもないしセンサーがある訳でもないのに、どうしてそれでわかるんだよ!」
「んー、そういえばリュウさんって、私が怪我してるのもすぐに気付いちゃうんだよね。すっごく周りをよく見てるんだなって思うよ」
「そうかもしれないけど、ヨーコのバディロイドはウサダだからね! ウサダがヨーコに関してリュウジに負けるのはなんかムカつくの!」
「もー、そんなところで張り合わなくても……」
話しながら歩く二人はリュウジに気付かず、通り過ぎていく。その後ろ姿を見送って、リュウジは苦笑した。
「周りをよく見てるっていうより、ヨーコちゃんセンサーが働いてるのかもね」
誰も聞いていないのをいい事に呟き、腕を組む。
ずっと一緒にいて、彼女がどんな時に笑ったり怒ったり泣いたりするのか。不調な時はどんなサインを出しているのか、見落とさないようにしてきた。
彼女の母親にはなれないけど、兄代わりにはなれる。それにヨーコには泣き顔よりも笑顔でいて欲しいからという、その一心で。
「ウサダには悪いけど、この役目はまだ降りるつもりはないよ」
いつか彼女が大人になるまでは。
リュウジは口元を綻ばせ、ゆっくりと歩き出した。