『恋情』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
『リュウさんの仕事、終わるまで横で見ていてもいい?』
そう言って椅子を並べたヨーコちゃんは言葉の通りに何をするわけでもなく俺とパソコンの画面を眺めていたけれど、次第に頭がぐらぐらと揺れ始める。
「ヨーコちゃん、眠たい?」
声を掛けるとハッと目を開いて首を振るけれど、完全に眠たい時の顔をしている。
仕方ないなと苦笑して仕事を切り上げようとすると、腕に重みを感じる。視線を向けるとヨーコちゃんが俺の腕を枕代わりに頭を乗せていた。
「リュウさん、ごめん。五分だけこのまま寝かせて……」
「このままって……。さすがに体勢が不安定だから、せめて机にもたれるとか――」
「やだぁ。リュウさんがいい」
「……っ」
言うなり今度は俺の腿を枕にしたヨーコちゃんが体の力を抜く。
安心しきったように穏やかな顔をして寝息を立て始める彼女に、咎めることなど出来ずに溜め息一つ。
サラリと流れる艶やかな黒髪に、手を伸ばして指を絡める。
高校に入ってからトレードマークであるポニーテールを結うことは少なくなって、代わりに縛らずに下ろしたままのスタイルが多くなり。うっすらとではあるけれど化粧もするようになって、元々整っていた顔立ちが一層綺麗になった。
『女の子』から『大人の女性』になっていく、その過程をまざまざと見せられて。保護者であることをやめた事が裏目に出て、最近は彼女を一人の女性として意識し始めている自分がいる。
線を引かないと。そう思っているのに、時々こうして飛び込んでくる彼女に喜びすら感じてしまう。
「……ねぇ、ヨーコちゃん。俺がいいなんて言わないで。手放せなくなっちゃうよ」
ひとり呟き、指の間をすり抜けていく髪の感触を楽しんで。
そうしてふと我に返り、俺はヨーコちゃんの頭を何度か撫でて天井を仰いだ。