『合格祝いの贈り物』  (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)



「ヨーコちゃん、これ。合格祝いのプレゼント」
 編入試験の合格発表を受けた夜、ヨーコの部屋を訪ねてきたリュウジからの思いがけないサプライズ。ヨーコはパッと目を輝かせ、差し出された紙袋を受け取った。
「ありがとう、リュウさん! 開けてもいい?」
「もちろん」
 紙袋から包装紙に包まれた細長い箱を出し、ラッピングを慎重に解く。
 中身は腕時計で、シンプルながらも可愛いデザインの時計盤にライトブラウンのベルトという組み合わせ。一目で気に入り、ヨーコは目を輝かせた。
「なんかこれ、可愛いのに大人っぽい!」
「気に入ってもらえたかな?」
「うん! リュウさん、ありがとう!」
「どういたしまして。ヨーコちゃん、勉強頑張ってたからね。本当におめでとう」
 労うように頭に手を置くリュウジにくすぐったさを感じながら、ヨーコは思い返す。何冊ものパンフレットを持ち、将来を考え高校に通う事を勧めて熱弁していた彼のことを。
 まだ高校に通う事で自分にとって何がプラスになるのかはわからないが、あれだけ苦手だった勉強がほんの少しだけ楽しくなり、合格というお墨付きをもらったのだ。
 あの時の自分のままでは気付かなかった新しい発見を、きっとこれからたくさん経験出来るのだろう。
「リュウさん、高校に行くのを後押ししてくれてありがとう。……あの時はウザイなんて言ってごめんね」
「いや、落ち着いて考えると女子トイレまで付いていくなんて確かにやり過ぎだったから。こっちの方こそごめん」
「リュウさん、私のことになると時々熱くなりすぎるもんね。なんかそれを思うと、今は遠くなっちゃったなぁ……。ずっと一緒にいたから、少しだけさみしいかも」
「ヨーコちゃん……」
 頭の上の手が優しく髪を撫でる。ヨーコが視線を上げるとリュウジが笑った。
「俺も。仕事してても時々『ヨーコちゃん』って呼び掛けそうになるよ。そこにはいないのにね。それくらい一緒にいるのは当たり前だったけど、これからは楽しいことがたくさん待ってるよ。それに俺は管理局にいるから。困った時にはいつでも頼って」
「うん。困ってなくても会いに行くよ。リュウさんは? 私に会いたいって思ってくれる?」
「もちろん。可愛い妹分だからね」
 その言葉にヨーコの胸がチクリと痛む。
 どうしてだろうと思っていると、リュウジが手を引きながらドアの方に視線を投げた。
「そろそろ行くよ。もう遅い時間だから長居したらウサダに怒られそうだ」
「もう行っちゃうの?」
「そんな顔しないの。おやすみ、ヨーコちゃん」
「おやすみなさい」
 渋々リュウジを見送り、ドアのロックをかけたヨーコは腕時計を左の手首に付けた。
 ゴーバスターズの任を解かれて以来、モーフィンブレスは着用必須ではなくなり、なんとなく空いた左手に時折違和感を感じていた。
 けれど時を刻々と刻む時計の存在に、ふっと心が和らぐ。
「なんか離れててもリュウさんが一緒にいてくれてるみたい」
 これから一緒にいられる時間は減ってしまっても、築いてきた絆は変わらないのだと伝えてくれるようで。
 指先で時計盤をそっと撫で、ヨーコは微笑んだ。