『言えない悩みごと』  (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)



 リュウさんの事が好きって気付いてから、どうしても確かめたかったことがある。
「ねぇリュウさん、頭……撫でて?」
 誰もいない休憩スペース。
 そこで休んでいたリュウさんを見つけてお願いすると、少し考え込んだ後で私の頭を優しく撫でてくれた。
(ああ、やっぱり……)
 少し前まで、この手からあたたかな温もりをもらっていたのに。
 熱を帯びていく頬にまざまざと自覚する。今はもうあの頃の気持ちに戻れないのだと。
「……ヨーコちゃん?」
「ありがと。充電完了したよ!」
 手を止めたリュウさんが不思議そうに顔を覗き込もうとしたけれど、それより前にお礼を言ってパッと離れる。
「明日小テストがあるんだけど、これでがんばれそう。じゃあ勉強してくるね!」
 小さな嘘をついてリュウさんに背を向けて。引き留められないように走り出す。
 廊下を走り、曲がり角を曲がって。
 そこで早鐘のように鳴っている胸の音に気付いて立ち止まった。
(どうしよう……。どうしようもなく、リュウさんが好きなんだ)
 今まで当たり前に触れていたのに、こんなにも意識しちゃうなんて。
 世界が変わる。今までとは違う意味で特別な人になったリュウさんに、どんな顔をして会えばいいのか分からない。
「……どうしよう」
 いつだって相談相手になってくれていたリュウさんには話せない悩み事。
 私は熱くなったままの頬を抑えて天井を仰いだ。