『雪の日の忘れ物』  (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)



『ヨーコちゃん、マフラー忘れたでしょ。持ってきたから裏門まで来てくれるかな』
 その日最後の授業が終わり、携帯を確認した私はリュウさんからのメールに気付いて教室を飛び出した。
 午後から降り出した雪に、帰りは寒そうだな……なんて思っていたけれど、マフラーを忘れたことには気付いてなかった。
 忘れ物に気付いたのはリュウさん? それともウサダ?
 どっちにしても、学校までリュウさんが来てくれているのは間違いなくて、それが嬉しくて。
 急いで裏門から出ると少し離れた所にリュウさんが立っていて、私に気付くと傘を傾けながらなんだかおかしそうに笑った。
「なに、人の顔を見て笑ったりして」
「違う違う。ヨーコちゃん、マフラーを取りに来た代わりに傘忘れてきたでしょ」
「あ……」
 言われて気付く。今日は雪が降るから持っていきなよ、とウサダに渡された傘の存在に。
「そんなに慌てなくても良かったのに」
「だって、リュウさんがいるって思ったらすぐに会いたくなって。それに雪の中待っていてくれたから、体が冷えて風邪ひかないかなって思って」
「俺は夏がダメだけど冬は平気だから。でも心配してくれてありがとう」
 リュウさんはふわりと笑ってマフラーを私の首に巻いてくれて。それから髪の毛についた雪を払って傘を差し出した。
「もう授業は終わったんだよね。一緒に帰ろうか」
「うん! ……あ、でもリュウさん仕事は?」
「今日は半休。だから気にしなくていいよ」
「そっか。じゃあデートして帰ろ!」
「了解。リクエストは?」
「えっとね……」
 紺色の傘の下、リュウさんと話しながら歩き出す。
 雪降る日の特別な放課後デート。
 サクサクと鳴る雪を踏みしめながら、私はリュウさんを見上げて笑った。