『桜』  (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)



 満開の桜の花。
 足を延ばした公園にはたくさんの桜が植えられていて、綺麗な淡いピンク色に染まった光景に昔を思い出す。

 3歳の春、お母さんと二人で桜の花を見上げて。
 4歳の春、お母さんの代わりに黒木さんとリュウさんの手を握って、一緒に桜並木を散歩した。

 それから毎年春になると、桜並木の下を歩きたくて「桜を見に行きたい」とお願いをして。
 黒木さんが忙しくて来られない時もあったけど、リュウさんが必ず一緒に行ってくれた。

 17歳の春は一番賑やかに。
 特命部のみんなや、バディロイドのみんな、そしてリカさんも誘ってお花見をした。

 その翌年と次の年は友達だったり特命部の誰かとだったりしたけれど、リュウさんとは見に行けなくて。
 次にリュウさんと桜を見に行ったのは、恋人という関係になった二十歳の春だった。


 あれから八年。今は――。




「ヨーコちゃん、笑って!」
 三脚にカメラをセットしたリュウさんがシャッターを押す。そしてプレビュー画面を確認して嬉しそうに笑うと、もう一度カメラのボタンを押して小走りに駆け寄ると、私の隣に立った。
「今度は三人一緒に撮るよ」
 そう言って私の肩を抱いて優しく引き寄せると、腕の中の子どもが小さく身動ぎをした。
「あ、起こしちゃったかな」
「大丈夫。これくらいじゃ起きないよ」
「そっか、良かった。……それにしても寝顔、無防備だよね。可愛くて仕方ないんだけど」
「リュウさん、ほんと親バカなんだから。……あ、ねぇ、写真は?」
「あ、忘れてた。もう一回タイマーかけてくるよ」
 慌ててカメラの所に向かうリュウさんの背中を見ながら苦笑して、もう一度思いを馳せる。

 ねぇ、お母さん。
 お母さんと見上げた桜の花を、今はリュウさんと私と、もう一人の家族と一緒に見てるんだよ。
 桜って綺麗だね。
 この子が歩けるようになったら、手を繋いで桜並木を歩くんだ。あの日のお母さんと私みたいに。
 それでね、いつかこの子が大切な誰かと桜を見に行くようになったら、リュウさんと腕を組んで歩くんだ。いつかお別れがくるその時まで毎年デートするの。

「お待たせ。あと5秒くらいかな。笑って――」
「リュウさん、大好き」
「……っ」
 背伸びして頬に唇を寄せて。
 どんな顔して写真に写ってるかな……なんて思いながら顔を離すと、目を泳がせたリュウさんが小さな声で「ずるいよ、ヨーコちゃん」とつぶやくのを聞いて笑ってしまう。
 満開の桜の下、そんなやり取りをしながら幸せな今という時に誰にともなく感謝する。
 私たちが守った未来。
 ふいに抱っこしている子どもの胸元に桜の花弁が舞い降りて、私とリュウさんは目を見合わせて口元を綻ばせた。