『Trick or Treat』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
「Trick or Treat‼︎」
魔女の格好をしたヨーコちゃんにそう言葉を投げ掛けられ、ああそうか、今日はハロウィンだったかと気付く。
確かポケットに研究室の上司にもらった飴が入っていたはずだと思い出して手を入れると、指先に飴が触れる。それを取り出してヨーコちゃんに差し出すと、思いきり苦々しい顔をされた。
「これ……ハッカじゃん」
「苦手だった?」
「あんまり好きじゃない」
「ごめん、手持ちがこれしかなくて」
「いいよ。別にお菓子が欲しかった訳じゃないし……」
「そうなの?」
思い掛けない言葉に首を傾げると、ヨーコちゃんはハッカ飴の包装を開けて飴玉を口の中に放り込んだ。
「……やっぱ美味しくない。リュウさんもらって」
「もらってって……え?」
不意に襟元を引かれ、視界いっぱいにヨーコちゃんの顔が見えて。次の瞬間、唇が重なってハッカ飴が口の中に移された。
「……いたずら、完了」
満足そうに笑顔を浮かべるヨーコちゃんと、不意打ちに動揺する俺と。
周囲に人はいなかったかと思わず辺りを見回すと、ヨーコちゃんが大丈夫だよと笑った。
「じゃあ、他の人の所に行ってくるね!」
くるりと背中を向けてマントをなびかせるヨーコちゃんに、思わず「他の人にも同じことしないよね⁉︎」と問い掛けると「するわけないよ」と答えが返る。
「リュウさんだけだよ、こんな悪戯するのは」
軽い足取りで去って行く彼女を見送り、俺は顔に集まる熱に気付いて口元を覆った。