『Mission46 より』   (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)



 一体、身の内にどれ程のダメージを負っているのだろうか。ゴリサキは今にも昏倒しそうなリュウジに寄り添い、彼の体を支えた。
 エスケイプによって強制的に幾度となく熱暴走状態にさせられたリュウジは一人で歩く事は出来ず、ゴリサキが支えることでかろうじて立つことが出来る状態で意識も朦朧としている。ゴリサキが彼の身を案じて一足先に基地に戻るよう促すが、リュウジは首を横に振った。
「いや、ダメだ。まだエスケイプを削除出来ていない」
「でも立っているのもやっとなのに、この状態で戦える訳がない」
「それでも……行かないと。ゴリサキ頼む、連れて行ってくれ」
 懇願とも取れるリュウジの言葉にゴリサキは思考回路をぐるりと巡らせ、そして彼の願いを承諾して頷いた。



 ブレスの信号を頼りに駆け付けた廃工場。そこでエスケイプと交戦中の仲間達の姿を認め、ゴリサキは足を止めた。
 陣とJの連携攻撃が決まり、地に伏したエスケイプの姿が視界に映る。戦況はこちらが有利に運んでいるように見えて胸を撫で下ろすと、リュウジがトランスポッドを起動させてイチガンバスターを転送させると同時、彼の周りの空気がピリッと張り詰める。
「リュウジ?」
 ゴリサキの問い掛けには応えず、イチガンバスターの銃口を上げエスケイプへと照準を合わせたリュウジを見て、ゴリサキは目の前の状況に気付いた。
 立ちあがったエスケイプにとどめを刺すべくライオブラスターを携え、宙高く飛び上がったヨーコがロックオンをし、トリガーに指を掛けて力強く引く。だがエスケイプもまたヨーコに銃口を向け、狙いを定めた。
 幾度となくリカバリーをし、復活するエスケイプと、その身ひとつのヨーコと。
 危険だ、と思考回路が警報を鳴らす中、リュウジがイチガンバスターのトリガーを引いた。
 刹那、エスケイプの腕は彼の狙い通りに撃ち抜かれ、思わぬ銃撃に動揺し、視線をこちらに向けたエスケイプがライオブラスターの強大な光線に貫かれて倒れ臥す。
 その結末を見届け、ガクリと重くなった腕の重みにゴリサキは我に返り、リュウジの体を支え直した。
「リュウジ、大丈夫か?」
「ああ……」
 肩で荒い呼吸を繰り返し、その身をゴリサキに預けるほど衰弱し焦点もハッキリしない状態であるはずのリュウジが行った狙撃はヨーコの危機を救ったが、当のヨーコはライオブラスターの眩い光線の光の影響で視界が遮られ、水面下で何が起こっていたのかは把握出来ていないだろう。
 これまでの戦いでもリュウジがヨーコをフォローする場面は多々あったが、今回ばかりは感服するしかない。ヒトと同じ感情を持っているとはいえ、ゴリサキがリュウジと同じポジションであったのなら同じような動きは出来ないはずだ。
 危険予測に状況判断、コンディションダウンという状況下で保たれた射撃技術、何より大切な仲間を守りたいと思う強い意志。岩崎リュウジという人間だからこそヨーコの危機を回避出来たのだ。
 守るだけでは勝ちはないと陣は発破をかけていたが、やはりリュウジの強さの本質は他者を思い、守ることだとゴリサキは思い。――ふと視界にエンターの姿が入り込み、ゴリサキはリュウジを護るように大きな体を揺らがせた。
 戦いは終わっていない。第二幕の始まりだとでも言うように、エンターはいとも簡単にエスケイプを復活させる。
 重たい頭を上げ、エンターとエスケイプを見据えたリュウジの瞳は闘志を失っていない。
 ゴリサキは彼の負担が少しでも軽くなるよう全力でサポートする決意を改め、リュウジの身体をしっかりと支え仲間達の元へと向かった。