『Que Sera, Sera』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
夕食どき、食堂のザワザワとした雑音が耳に障る。周囲の音に昼間の苛立ちを思い出し、ヨーコは眉間に皺を寄せた。
(言いたい事があれば直接言えばいいのに!)
カツカレーのカツにフォークを突き刺し、大きく口を開けて齧ると、その様子を見ていたリュウジに声を掛けられた。
「ヨーコちゃん、何かあった?」
「……え?」
ヨーコは我に返り、向かいの席の彼に視線を投げる。箸を置き、真っ直ぐに自分に向き合っているリュウジを見て隠し事は出来ないと、ヨーコは水を一口飲んで心の内を吐き出すことにした。
「……実は、クラスに馴染めないというか。一つ歳が上だからっていうのもあるかもしれないけど、みんな私が特命部でバスターズとして戦ってたことを知っているみたいで、なんか腫れ物扱い。こっちを見ながらコソコソ話したりして、ムカついてるの」
「言いたいことがあれば面と向かって言えばいいのに、って?」
「ほんとそれ!」
「なるほどね……。でも多分、みんないい意味でヨーコちゃんに興味を持っているからだと思うよ。腫れ物扱いっていうよりは、どんな子なんだろうっていう純粋な興味。気になるけど声を掛けていいのかな……って感じじゃないかな」
「そう、なのかな」
「だって戦闘職種でヴァグラス相手に立ち回ってた子がスーツを脱いだら、こんな普通の可愛い女の子なんだから。そりゃあ驚くんじゃない?」
普通の可愛い女の子、と言われてヨーコの顔が綻ぶ。それを見てリュウジが微笑んだ。
「大丈夫、すぐに打ち解けられるよ。……三日三月三年。三という数字は最も安定した数字って言われていて、節目になるんだって。明日で三日目。きっと風向きが変わるはずだよ」
「三日三月三年、か。……うん、わかった」
「ヨーコちゃんならすぐに友達もできるよ。……ってことで、アドバイス料として一切れもらうね」
「あっ、私のカツ……!」
いつの間にか持っていた箸で夕食のメインを持ち去られ、頬を膨らませる。
「怒らない怒らない。ほら、替わりにエビフライをあげるから」
「え、やった! リュウさん優しい!」
「それはどうも」
ヨーコは穏やかに笑うリュウジに笑顔を返す。
明日はきっと大丈夫。もしダメだとしても自分から声を掛けてみよう。
上向いた気持ちを胸に、ヨーコはエビフライを口に運んでゆっくりと味わった。