『見えない夢』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
勉強はやっぱり好きじゃない。
黒板に書かれる白色の数式がチカチカと目に痛くて窓の外に視線を投げると、エネトロンタンクが見えた。
(管理局、あのタンクの近くだよね。……リュウさん、今頃何してるんだろ)
午前十時。九時出勤だから開発部で勤務している時間だけど、パソコンに向かっているのか会議に出ているのか、それとも他のことをしているのか。
マシンエンジニアとして働き始めたリュウさんは勉強が得意で、きっとこの黒板の数式もあっという間に解いてしまうはずだ。
(一緒に勉強したいな。それで解らないとこ教えて欲しい。同じ歳で同じクラスだったら良かったのに)
そんな事をぼんやりと考えてため息をつく。
現実にはリュウさんは二十九歳で私は十七歳。一緒にいるとあまり感じないんだけど、十二年の差は大きくて、こういう時にリュウさんは大人なんだって気付かされる。
夢が叶ってマシンエンジニアになったリュウさん。まだ自分の夢すら思い描けない私。勉強だって、何のためにしているのか分からないままでいる。
視線を手元に落とすと、リュウさんがプレゼントしてくれた腕時計が目に留まった。
『これからは楽しいことがたくさん待ってるよ。それに俺は管理局にいるから。困った時にはいつでも頼って』
そう言って笑い掛けてくれたリュウさんを思い出して会いたくなる。
(ねぇ、リュウさん。学校は楽しいけど勉強はやっぱり苦手なの。夢が見つかったらリュウさんみたいに頑張れるのかな……)
先生の声を遠くに感じ、私はもう一度外の景色を眺めながら小さく溜め息をついた。