『背中越しの温もり』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
(……またこんな所で寝てる)
ほぼ特命部の面々しか使わない場所ではあるが、いつ誰に見られるともわからない通路脇のベンチで眠るヨーコを見下ろし、リュウジは溜息をつきながら肩を揺さぶった。
「ヨーコちゃん、こんな場所で寝ないの」
「……ん、リュウさん連れてって」
寝ぼけ眼で両手を伸ばすヨーコに応え、抱き上げると首に腕が巻き付けられる。
「リュウさん、あったかい」
嬉しそうに微笑むヨーコに、リュウジは苦笑した。
「俺は湯たんぽ代わり?」
「湯たんぽって、なんか昭和っぽいね」
「昭和生まれで悪かったね。それより起きたのなら自分で歩こうか」
「やだ。連れていってよ」
降りないとばかりにギュウギュウと抱き付くヨーコに折れ、彼女の望むままに背負って歩き出すと、ヨーコはすっかり身を委ねてウトウトと微睡んでいる。
部屋に向かいながら、リュウジは物思った。
志を同じとして寄り添いながらここまできた。けれど小さかったヨーコももう十二歳で、いつかは自分から離れていくだろう。
あと幾度こうして付き添う事が出来るのだろうか――そんな事を考えてゆるりと首を振る。
今はただ、この温かな時間を慈しもう。
リュウジは背中越しの温もりに、柔らかな笑みを浮かべた。