『深夜の邂逅』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
深夜、残業を終えて自室に戻るべく、居住区の通路を歩いていたリュウジは先を行く影に気付いてハッと息を呑んだ。
薄暗い照明の中、浮かぶシルエットはよく見知ったもので。「ヨーコちゃん」と声を漏らせば彼女は足を止め、クルリと振り返って軽やかな足取りでリュウジの前に立った。
「良かった、リュウさんに会えた!」
「俺を探してたの? こんな夜更けに、しかもそんな格好で」
「そんな格好って、なにかおかしい?」
咎めるようなリュウジの口調にヨーコは不思議そうに自らの服を見下ろした。
キャミソールにショートパンツ。今シーズンの夏を迎え、寝るときはこの服装で寝ているがリュウジには不服らしい。おかしくないと思うけど、と純粋に言葉を返せば、リュウジの表情が険しくなった。
「あのね、ヨーコちゃん。今、何歳になった?」
「え? 二十歳だけど……」
リュウさん、なんでそんなことを――と続けようとして、ヨーコは息を呑む。珍しくリュウジの纏う雰囲気が重苦しいものになっている。元々暗い照明がもう一段階光源が絞られたように感じられて、イヤな胸騒ぎに両手を胸の前で組み合わせる。
「あの、リュウさん……?」
「……そんな格好で夜中に女の子一人でうろついて、何かあったらどうするつもり?」
「何かって……。や、まさかそんなこと起こるわけないし、もし何かあったら蹴り飛ばすから大丈夫だよ」
「大丈夫、ね」
「リュウさん……?」
「じゃあ試しに俺を蹴り飛ばしてみてよ」
「え……? ――っ!」
言い終わるや否や、ヨーコの手首が掴み上げられあっという間に壁に縫い付けられる。いつもとはまるで違い、手首を拘束する彼の手の力は相応に込められていて同時に太腿の間にリュウジの脚が入り込み、あっさりと動きを封じられる。
ヨーコを拘束する力はおそらく成人男性のものと同等に抑えているのだろう。彼を蹴り飛ばすつもりなど毛頭ないが、他の誰かに同じように拘束されたとして思ったよりも抵抗出来ないと知らしめられたヨーコはそろりとリュウジを見上げた。
「さぁ、どうかな? 実際にこの状況に陥ったらどうするつもり?」
「……ごめん、なさい」
スゥッと細められた目にヨーコは白旗をあげたが、リュウジの纏う空気は未だに不穏だ。
「ヨーコちゃん」
「はい」
「自分の力を過信しないこと。確かに戦闘技術は身に着けているけど、あくまで普通の女の子なんだからそんな薄着で夜に出歩かないこと。例え基地の中でもね」
「ごめんなさい」
「うん、わかったならいいよ。けどとりあえずお仕置きも必要かな」
「えっ、おしおき⁉」
驚くヨーコを抱き上げ、リュウジは自室へと向かって歩き出す。
お仕置きが何か気になって仕方ないが聞ける雰囲気ではなく、ヨーコは恋人の腕の中、期待と不安に小さく身を震わせた。