『どんぐりと秋の空』   (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)



「ゴーバスターズのおにいさん、おねえさん。みんなをまもってくれてありがとう」
 エネトロンを奪おうとしていたヴァグラーをシャットダウンし、引き上げようとしていた俺とヨーコちゃんに駆け寄って手を差し出す女の子。反射的に手のひらで受け皿を作ると、コロコロと丸く艶やかなどんぐりが数個のせられる。
「わぁ、可愛いどんぐり。もらっちゃってもいいの?」
 ヨーコちゃんが俺の手にあるどんぐりを一つ取り、指先で摘み上げて嬉しそうに微笑むと、女の子は大きくうなずいた。
「ありがとう。大切にするね」
「うん! じゃあ、バイバイ!」
 スカートを翻し、親元に戻っていく女の子の後ろ姿を見送っていると、ヨーコちゃんが俺を見上げて笑った。
「今日は可愛いお礼をもらっちゃったね。どんぐり、久しぶりに触ったなぁ」
「そういえば、小さい頃はよく持って帰ってきてたよね。ああ、思い出した。どんぐり爆弾だ」
「どんぐり爆弾?」
「うん。よく俺の部屋のあちこちに落ちてて、うっかり踏ん付けたり、ベッドで寝返りうった時にも体の下にどんぐりがあって痛かったり、洗濯物の中に紛れ込んでたり。季節問わずどこからともなく現れて、多少なりとも痛い目に遭うこともあるから、どんぐり爆弾って呼んでたんだよね」
「え、それってもしかしなくても迷惑だったよね……?」
「いや、そんなことないよ。むしろ微笑ましかったかな。どんぐりを宝物みたいに大事に持ち帰って、こんなどんぐりがあったよーって見せてくれてさ。嬉しそうなヨーコちゃんを見て癒されたというか、平和だなって。……で、そんな平和な光景を守るのが俺の役目なんだって思ったりしたよ」
 訓練漬けの毎日で、時折なんでこんなことしてるんだろう……なんて自分の行く先を見失いかけた時もあったけど、ヨーコちゃんの存在や、彼女がくれる日常の光景を守ろうと思う事でバスターズとしてのイメージを持つことが出来た。
 あの頃は地球や人々を守るだなんて大きな事はいまいち想像出来なかったけれど、女の子にもらったどんぐりが、彼女とその周りの世界を守ることが出来たのだと教えてくれる。そして俺にとってのヨーコちゃんの存在の大きさも。
「ありがとね、ヨーコちゃん」
 頭を撫でるとヨーコちゃんは『どういたしまして』とくすぐったそうに笑う。
「さて、帰りますか」
「うん!」
 手の中のどんぐりを胸ポケットに入れて、俺はヨーコちゃんと一緒にシューターへと歩き出した。