『やきもち』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
「リュウさん、おまたせ……っ⁉」
デートの途中、トイレから戻ったヨーコは彼が見知らぬ女性に声を掛けられているのを見て思わず足を止めた。
女性はモデルのようなプロポーションで、綺麗な顔立ちをしている。歳の頃もリュウジと同じくらいで思わずお似合いだと見入ってしまう。
「……っ」
半ば呆けるように見ていたヨーコだったが、ふとリュウジが見せた笑顔に胸がざわりと音を立て、気付けば駆け寄っていた。
「――リュウさん!」
「あ、ヨーコちゃん。おかえり」
「この人は?」
「ああ、俺が知り合いに似てたらしくて、人違いしたんだって」
リュウジの言葉に女性を見ると曖昧な笑顔を浮かべていて、ヨーコは作り笑顔を浮かべながらするりとリュウジの腕に手を絡めた。
「違ったのなら、もういいですよね。この人、私の彼氏なんで。それじゃあ失礼します」
「あ、ヨーコちゃん⁉」
ぐいぐいとリュウジの腕を引き、人気の少ない裏通りに出るとヨーコは立ち止まって手を離し。
いち、に、さん――と心の中でカウントをして気持ちを落ち着かせると、リュウジを見上げた。
「……ごめん、リュウさん。あの女の人と一緒にいるのを見たら嫌な気持ちになったから」
どうしたのかと問われる前に行動の理由を話すと、リュウジはヨーコの手を握り、ふわりと笑った。
「嫉妬してくれたんだ。ちょっと驚いたけど、『私の彼氏』って言葉、嬉しかったよ」
注意されると思いきや、表情を緩ませながら嬉しがるリュウジに拍子抜けをしつつ照れくさくなって視線を外す。
「それは……っ、ついとっさに言っちゃって。……でも、子どもっぽかったよね」
「そんなことないよ。実際、俺は彼氏だしヨーコちゃんのものだから」
機嫌よくニコニコと笑うリュウジに唇を尖らせ、ヨーコは彼の首に手を回して引き寄せた。
鼻先が触れ合いそうなほど近付いた顔。その距離でジッと見つめる。
「……ないって信じてるけど、他の女の人に浮気しないでね」
「するわけないでしょ。こんなに可愛い女の子、手放さないようにするのに必死なんだから」
「ほんと?」
「本当だよ」
「うん、わかった」
ヨーコの表情が和らぎ、首の拘束を解いた次の瞬間。リュウジが唇を軽く触れ合わせて微笑む。
「リュウさん⁉︎」
「さ、デートの続きをしようか」
「……うん」
揺らいだ気持ちはあっという間に落ち着いて。
繋いだ手を握り返し、頬を染めながらヨーコは歩き出した。