『カラフルキャンディ』   (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)



 ある日の午後、気分転換にと外出許可をもらって出かけた街中で、ふとヨーコちゃんの足が止まる。
 彼女の視線の先にあるのは、雑貨屋のショーウィンドウに飾られた瓶付めのカラフルキャンディ。
 赤、黄、青、ピンクなど、様々な色のキャンディはきっとキラキラと輝いて見えるのだろう。食い入るように見入っているヨーコちゃんの頭に手を置いて、俺は彼女と視線を合わせるためにしゃがみ込んだ。
「あれが欲しいの?」
「うん。……でも、おこづかいが足りないから」
 財布が入ったポーチの紐を握り締め、少し悲しそうに値札を見つめるヨーコちゃんに、ウサダが出掛けに百円玉を数枚渡していたことを思い出す。
 小学生の彼女が自分で買うには高価なお菓子。でも――。
 俺はヨーコちゃんに笑いかけ、小さな手に触れる。
「足りない分は俺が出すよ。だから買っていこう」
「ほんと……? リュウにいちゃん、いいの?」
「もちろん。いつも頑張ってるご褒美にね。……あ、でもウサダには内緒だよ」
「ふふっ。うん、ないしょにする! ありがとう、リュウにいちゃん」
 パッと明るく笑うヨーコちゃんに釣られて俺も笑顔になる。
 店に入って会計を済ませると、ヨーコちゃんはキャンディが入った瓶を大事そうに抱えて歩き。そして近くの公園に寄るとベンチに座り、瓶の蓋を開けてキャンディを取り出した。
「これはリュウにいちゃんの」
 差し出されたのは青色のキャンディ。それを「ありがとう」と受け取るとヨーコちゃんは黄色のキャンディを取り出して嬉しそうに笑った。
「ウサダとおなじ色のキャンディだよ。リュウさんのはゴリサキの色!」
「ほんとだ、同じだね」
 言葉を返しながら心が温かくなる。
 思わずウサダに教えたくなるけれど、きっと彼は嬉しい反面、照れ隠しに怒るだろうから。
 今日の特別な買い物は俺と彼女の小さな秘密。
 二人同時にキャンディを口に頬張り、顔を見合わせて笑い合った。