『報告』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
「ただいま! あのねウサダ。聞いて欲しい事があるの」
いつになく、そう、大好きな菓子を目にした時やテストで思いがけずいい点を取った時、それに任務を完璧に遂行した時よりも遥かに上機嫌なヨーコの声に、ウサダはプイと背を向けた。
「いい。聞きたくない」
「何それ! まだ何も言ってないのに!」
非難の声をあげるヨーコを無視して、ウサダは彼女のデスクに視線を投げた。
今日の外出はリュウジと一緒で、ヨーコは数日前から楽しみにしていた。
それこそ服は何にしよう、髪型は、少し化粧をした方がいいかな……などと完全に浮かれており、まるで恋人とのデートを待ち侘びるかのような浮かれっぷりに、昨日の夜、雷を落としたのだ。
『ヨーコ、出掛けるのはいいけど課題を全部終わらせてからじゃないと許さないから』
その言葉に反発すると思いきや、ヨーコは素直に机に向かい、正誤はともかく課題を全て終わらせたのだ。
絶対に行きたい。リュウジと出掛けたい。
そんな強い意志を感じて、同時に気付いた。ヨーコの中のリュウジの存在は、ウサダの知らない内に変化していたのだと。
そして外出先から戻ってきたとたん、幸せいっぱいオーラを放ちながら話があると言うのだ。どんな内容なのか、聞かずともわかる。
積み上げられたテキストに思いを馳せていると、痺れを切らしたようにグイッと容赦なく引っ張られた。
「ねー! ウサダってば!」
「しつこいな、ヨーコは! 耳引っ張らないでくれる⁉︎」
「ごめん。でもお願い! 話を聞いて欲しいの。ウサダにはちゃんと報告したいから!」
「……ヨーコ」
ウサダを見る目は真剣で、これ以上抵抗は出来ないと覚悟する。
「わかった。話聞くよ」
答えると、ヨーコはホッとしたように笑ってウサダの横に座った。
「あのね、ウサダ。私、リュウさんと付き合うことになったよ。私から告白して、OKもらったの」
「……そう」
予想通りの結果に少しぶっきらぼうに相槌を打つと、ヨーコは苦笑した。
「なによ、お祝いしてくれないの?」
「だってウサダ、何も相談されなかったし。ふぅん、あっそ。良かったねって感じ。っていうか、リュウジでいいの? ヨーコならもっと若くてカッコイイ男つかまえられるでしょ」
「そんな人、例え現れたとして突然連れてきても、ウサダは簡単には認めないでしょ?」
「ま、そうだね。ヨーコには幸せになってもらいたいから、ウサダの採点は厳しいと思っておいて」
「なんかすっごく想像つく。……でもウサダ、リュウさんのこと、反対はしないんだね」
「まぁ、ヨーコのことを誰より知ってるし、大切にしてくれるって知ってるからね。それにヨーコが望んでリュウジが応えた。反対できるワケないでしょ」
「……うん。ウサダ、話を聞いてくれてありがとう」
「ヨーコも、話してくれてありがと。でも高校卒業するまでは学業優先だからね! それまでは清い交際をすること!」
「う、わかった……。でも、清い交際ってどういうこと?」
「それはリュウジにそのまんま言えば伝わるから!」
「ん、わかった。後で伝えておくね」
素直に頷くヨーコに、ウサダはため息をつく。
ヨーコだって普通の女の子だ。
いつかこんな日が来るかもしれないとは思っていたが、予想より少しだけ早く、その相手がリュウジだということ。
ヨーコを誰よりも大切に思う彼が相手では、認めない訳にはいかない。
口では渋ってみせたが、本当は嬉しくて。
ウサダは隣に座るヨーコを見て、おめでとうと小さくつぶやいた。