『卒業の夜に』   (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)



「ヨーコちゃん、高校卒業おめでとう」
 ヒロムの家で特命部のみんなが集まってお祝いしてくれた、卒業祝いのパーティーの後。
 私を乗せて車で管理局まで戻ってきたリュウさんは後部座席から大きな花束を出して渡してくれた。
「ありがとう……。すっごく綺麗」
「喜んでもらえたなら良かった。それから、もう一つプレゼントがあるんだけど、受け取ってくれるかな」
「え、なんだろ……」
 花束で十分嬉しいのに、もう一つなんて。
 期待しながら待っていると、リュウさんはジャケットのポケットから小さな箱を取り出して私の手に置いた。
 小さな箱はジュエリーボックス。
 その中に入っているものがなにか、なんとなく分かって……でも信じられなくて。
 恐る恐る開けてみると、お揃いのシルバーリングが並んでいた。
「リュウさん、これって――」
「うん。ペアリング。俺としては婚約指輪にしたいと思ってるんだけど」
「……っ」
 リュウさんの言葉に胸がぎゅっと締め付けられて、涙が溢れる。
「まだ高校を卒業したばかりでこれを贈るのは早いかなとも思ったけど、付き合うことになってからずっと結婚のことは考えてたから。予約だけでも今させてくれると嬉しいけど、どうかな?」
 将来の約束を告げるリュウさんに、何度も何度も頷いて。
「私も、リュウさんを予約させて」
 そう答えて大きい方のリングをリュウさんの指に嵌める。
 リュウさんはすっごく嬉しそうな顔をして指輪を眺めて。そしてゆっくりと、大切なものを扱うように私の指にもう一つのリングを嵌めてくれた。
「……ピッタリ」
「良かった。……ねぇ、ヨーコちゃん。予約ついでにもう一つ。俺の望みを叶えてくれる?」
 まるで許しを請うようなリュウさんの声。
 リュウさんの望み。それはたぶん私と同じで。
 両想いになって、たくさんのキスを重ねてきた。お互いの温もりを求めて肌に触れることもあった。
 もう数え切れないくらい私はリュウさんを、リュウさんは私を求めてきたけれど、越えることのなかった最後の一線。
 ずっとそうしたいって思ってた。私のぜんぶをリュウさんにあげられる日を、ずっと待っていた。
 だから。
「私も。ずっと今日を待ってたんだよ。だから、リュウさんのものにして。私のぜんぶをあげるから」
 涙を拭って笑うと、今度はリュウさんが泣きそうな顔をして。
 二人、車を降りて居住区に向かう。
 ずっと暮らしてきた私たちの居場所。
 タッチパネルでロックを解除して体を滑り込ませると、待ちきれずにキスをする。
 いつになく性急なキスに息を整えられずにいると、キスの合間に手を恭しく持ち上げられ、指輪に口付けられて全身が熱くなった。
 指を絡め、唇を重ねて。
 大好きな人と過ごす特別な夜に、私はそっと目を閉じた。