『食堂にて』   (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ) ※食堂のおばさん目線の話



「近藤さん、ちょっといいですか? あの、実はヨーコちゃんにオムライスを作って欲しいってリクエストされたんですけど……作り方とか教えてもらってもいいですか?」
 ある日の午後、食堂に顔を出したリュウちゃんの頼み事。もちろんと答えて余った食材を使い、チキンライスの作り方を実際に作りながら伝え、卵を巻く練習をする。
 実家にいた時は料理を作った事がなかったと言うけど、コツを掴むのが早くて三回目で綺麗に巻けるようになった。
「うん、いいね。リュウちゃん上手いじゃないか」
「ありがとうございます」
 照れたように笑うリュウちゃんは良い顔をしていて、私まで笑顔になる。
「ヨーコちゃん、喜んでくれるかな……」
「そりゃそうさ。けど、ちょっとくらいタマゴが破れたって大丈夫だよ。見た目よりも『リュウちゃんが自分のために作ってくれた』っていうのが一番大事で、それだけであの子にとっては特別なんだからさ」
 お節介かもしれないけど、そんな個人論を伝えてみるとリュウちゃんは目を瞬かせた。
「完璧を目指さなくてもいい、か……」
 ポツリとつぶやいて少し考え込み、そしてふと気付いたように顔を上げる。
「ありがとうございます」
 感謝の言葉と共に向けられた笑顔は明るくて、私は頷いた。
 時折疲れ切った様子で食事をとるリュウちゃんは、この歳できっといろいろなものを抱えているのだろう。
 ヨーコちゃんという存在が彼に与えてくれる本来の日常と同じように、この食堂で少しでも肩の力が抜けるといい。
「またいつでも声を掛けなよ、リュウちゃん」
 軽く背中を叩くとリュウちゃんは前につんのめり、痛いですよと笑った。












食堂のおばちゃんシリーズ、複数話あります(笑)