『食堂にて 3』 (特命戦隊ゴーバスターズ/リュウジ×ヨーコ)
「最近、ヨーコちゃんがよく顔を出すんだよ。美味しいご飯を作ってあげたいって、レシピや作り方を聞きにさ。リュウちゃん、愛されてるじゃないか」
カウンターに置いたA定食のトレーに手を置いたまま、食堂のおばちゃんが話を振ってくる。
「で、作ってもらった感想は?」
グイグイと身を乗り出すおばちゃんからトレーを引き受けようとするけれど、彼女は手を離さない。
これは何か答えるまで解放されないと察して、俺は渋々口を開いた。
「……まだ食べさせてもらっていませんよ。黒木さんや森下さん、仲村さんや他のメンバーには味見してもらったりしてるそうなんですけど、俺には頑なに食べさせてくれなくて。なんか、完璧になったら振舞ってくれるそうですけど」
もう二週間以上、彼女の手料理を待ち続けているのにお預けを食らいっぱなしで。
未完成だって構わないし、何なら味見係を買って出たいのに。
ため息をつくと、おばちゃんは笑った。
「あー。まぁヨーコちゃんの気持ちもわからなくないけどね、私は。リュウちゃん、料理もそこそこ出来ちゃうでしょ。ヨーコちゃんとしてはリュウちゃんよりも美味しいものを作れるようになってからお披露目したいんだろうね。そこは我慢のしどころ。相手を喜ばせたいっていう女心だよ、きっと」
「マジかぁ……」
「ま、それまでは食べ慣れたここの食事を楽しむんだね」
ようやくトレーが手元に来て俺は苦笑する。
「美味しくいただきます」
ヨーコちゃんの手料理を食べられるのはいつの日か。
俺は温かな定食を手にテーブルに向かった。