旅の休息  (聖剣伝説3/ホークアイ×リース)



「やっと町に着きましたね……。宿で少し休みませんか……って、ホークアイ?」
 すぐ隣にいたはずのホークアイの姿が見えずに辺りをキョロキョロと見回すと、近くの出店で何やらやり取りをしている彼を見つけ、リースは足を向けた。
 近付くにつれ肉が焼ける匂いと香辛料の香りが強くなり、鼻がくすぐられる。ホークアイが立ち寄ったのは軽食を売る出店で、彼の元に辿り着くと「ほらよ」と紙の包みを渡されてリースは目を瞬かせた。
「あの、これは……」
「腹減ってるだろ? 宿で休む前にとりあえず軽く食べていこうと思って」
「えっと、ありがとうございます。これ、いくらですか?」
「そんなの奢りに決まってる。さぁ、冷めないうちに食べようぜ」
 ホークアイはリースに笑い掛け、出店の近くにある木箱の上に腰を下ろすと慣れた様子で齧り付いた。その様子を見て彼の隣に座り、リースは手の中の紙包みをじっと見つめる。
 パンのような生地を二つに折り畳み、その間に香ばしく焼けた鶏肉と野菜が挟まれている。味付けはわからないが、何らかの香辛料が使われているようだ。
 フォークもナイフもなく、上手く食べられるかわからないが彼に倣って食べるしかないと、思い切って齧り付いたリースは口元に手を当てた。
「これ、美味しい……!」
「だろ? ちょっとスパイシーなのがまたいいというか。宿でも郷土料理は出るが、出店はまた個性的で美味いのが多いんだ」
「そうなんですね。一人で旅をしていたら、なかなか立ち寄る機会がなかったかもしれません」
「王女様、だもんな」
「……もしかして、揶揄ってます?」
「いいや。ただ、本来だったら王族はこういう出店のものは口にしないんだろ? 毒見役ならオレがいくらでも引き受けるから、また次の街でも美味いものを食べようぜ。思いがけない長旅だ。どうせ世界を巡るのなら、休息の間くらい楽しまなきゃ損だろ」
「……ふふっ、そうですね。よろしくお願いします、ホークアイ」
 他愛無い会話と食事がどことなく張り詰めた心を緩めてくれる。
 柔らかに微笑み、リースは先ほどよりも大きな口で二口目を頬張った。