『帰り道、君と肩を並べて』  (スターオーシャン5/フィデル×ミキ)



 スタール村を囲むように聳え立つ岩肌が紅く染まり、空気に冷たさが混じる。迫る夜の気配にもうそんな時間かと剣を鞘に収め、僕は帰路についた。
 修練場を後にして石畳みの道を歩んでいくと、先の方にミキの姿を見付けて声を掛けた。
「ミキ」
「あ、フィデル兄。鍛錬は終わったの?」
 そう言って振り返ったミキは両手に荷物を下げている。
「ああ、今終わった所だ。ミキは買い物の帰りか。荷物、僕が持つよ」
「ありがとう」
 預かった籐籠はズッシリと重く、これをここまで運んで来たのかと思いながらミキを見ると、額に汗が滲んでいた。
「ずいぶん重いな。何を買ったんだ?」
「お米にお肉に野菜、それからお砂糖も切らしちゃいそうだったから。明日の道場で出すまかないの材料も買い揃えたから、こんな量になっちゃって。フィデル兄に会えて助かったよ」
「あまり無理するなよ。言ってくれたら荷物持ちくらい付き合うからさ」
「じゃあ、今度たくさんお買い物する時はお願いしちゃおうかな」
「ああ」
 頷くとミキは嬉しそうに笑う。
 歩きながら会話を重ねていると、妙にミキの機嫌が良いことに気付いた。買い物に付き合う約束をしたからかと思ったが、他にも何かありそうで。
 ふと籠の中に視線を落とし、僕は納得すると同時に思わず笑った。
「……これ。ミキの好きな菓子も入ってるな」
「あ、バレちゃった? 今ダイエット中だからやめておこうかと思ったんだけど、どうしても食べたくなっちゃって」
「別にダイエットする必要なんてないだろ?」
「ありますー! もう、フィデル兄は女心に疎いんだから。だいたいフィデル兄が無駄なお肉が無さすぎなのが問題なんだからね」
「なんで僕の体型が問題なんだよ」
 そう返すとミキはぷくっと頰を膨らませる。これ以上この話を続けるのは良くないと悟り、僕は大げさに腹を叩いた。
「あー、それにしても腹が減ったな。ミキ、晩ご飯は何を作ってくれるんだ?」
「……今日はフィデル兄の好きなカレーライスだよ」
「ほんとか? ミキのカレーライスは絶品だからな。楽しみだよ」
「絶品だなんて大げさだなぁ。うん、頑張って作るね!」
 さっきまでの膨れ面はどこへやら。コロコロと表情が変わるミキの笑顔につられ、僕も笑う。
 いつもの日常、いつもの光景。
 夕日が沈みゆく中、肩を並べて歩きながら僕たちは家路を辿った。











お題 『帰り道、君と肩を並べて』