『戦火の後で』 (スターオーシャン5/フィデル×ミキ)
長い夜の終わりを告げるかのように、空に朱が差す。
やがて周囲が白み始めると剣を交えていた相手が身を引き、こちらを睨み付けながら村の出口へと走っていった。
「終わった……の?」
杖を構えたままミキがつぶやく。その自問のような言葉に「そうみたいだ」と同意し、僕は剣を収めた。
「ミキ、怪我はないか?」
「大丈夫。フィデルが守ってくれたから」
戦火の中、前線で戦った僕について来た幼馴染の無事を確認すると、ひと息つく。
そして周囲を見渡し、怪我を負っている村の仲間を見つけてミキに頼んだ。
「ミキ、彼に治療を頼む」
「任せて。他にも怪我をしている人がいるはずだし、手当てしたら診療所に向かうね」
「ああ。僕は被害状況の把握と怪我人の収容に回る。また後で」
「うん」
夜通しの戦闘の後で体を休ませてやりたい所だが、状況がそれを許さない。この村の治癒術師は診療所のメリル先生とミキだけだ。
ヒーリングを施すミキに負傷者を託し、石階段を上る。
陽の光が黒煙の立ち上る村を徐々に照らし、痛ましい現実を突き付ける。
しばらく前から不穏な噂が流れていたが、ついにこの村も盗賊団に狙われてしまった。
今回は撃退に成功したが、もう一度襲撃されたとしたら。
石階段を上りきった僕は立ち止まり、あの人を思い浮かべる。
「道場と村の皆を頼む」
僕が成人を迎えたあの時、託された守るべきもの。
この村を守る為に今すべき事は――。
剣の鞘に触れ、僕は歩き出した。