『コーヒータイム』 (スターオーシャン5/ヴィクトル×フィオーレ)
「ヴィクトル、コーヒーでも飲む?」
「ああ、頼む」
週末の午後、部屋の主人であるフィオーレが飲み物を用意し始める。
彼女がムーンベースに移住してから数ヶ月。すっかりこちらの生活に馴染んでいるようで手際がいい。
やがてコーヒーの香りが部屋に広がり、テーブルにマグカップが二つ置かれた。
「このカップは初めて見るな……」
いつもとは違う、シンプルデザインで色違いの揃いのカップ。
隣に腰掛けたフィオーレを見ると、彼女は柔らかな笑みを浮かべた。
「出先で見かけて、つい買ってしまったの。来客用のカップとは別の、専用のカップが欲しくなっちゃって」
「……そうか」
平静を装うつもりが、声が僅かに上擦る。
揃いのカップが私達の関係を物語るようで、素直に嬉しいと思う。
「ありがとう」
礼を告げてカップを口元に運ぶと、淹れたてのコーヒーの香りに気持ちが安らぐ。
週末に過ごす彼女との特別な時間。
私はカップを置き、微笑むフィオーレの頰に唇を寄せた。