『戦線に立つ』 (スターオーシャン5/フィオーレ)
肌がチリチリと粟立つ。
土煙が舞い、大地に振動が響く。剣戟や砲撃の音、怒号や悲鳴、様々な音が耳を裂く。
――これが戦場。
わたしは意を決して詠唱を始めた。
力ある言葉が風の刃を生み出す。それをトレクール兵に向け解き放つと悲鳴と共に血飛沫が舞った。
その血が近くに居たレスリア兵の頰にかかるが、彼は物ともせず追撃に走り剣を振りかざす。銀色に光る刃は的確に敵の急所に突き立てられ、トレクール兵はくぐもった声を発し、その体躯が地に崩れ落ちた。
絶命したのだ、と思うと同時に息が詰まる。指先が震え、悔いる気持ちを抱く。けれど迫る敵勢に我に帰ると次なる詠唱を紡いだ。
これは戦争だ。今ここで食い止めなければ力のない民間人が大勢命を落とす事になる。
それにレスリアが陥落してしまえばサンテロールもあっという間に攻め込まれてしまうだろう。
覚悟を決め、私は意識を目の前の戦況へと集中させた。