『戦火の後』 (スターオーシャン5/ヴィクトル×フィオーレ)
「あれは……」
負傷者の搬送や被害状況の確認で周囲が騒然とする中、一人佇むブルネリ殿が視界に入り、その横顔に滲む苦悩の色を感じて私は近付いた。
気配に気付き、こちらに視線を投げた彼女は目を瞬かせ、そして小首を傾げる。
「わたしに何か用かしら」
「いや、用という訳ではないが……」
「そう」
言葉を切ったブルネリ殿は周囲をゆっくりと見渡し、そして細く息を吐いた。
「生きていて良かった。あなたもわたしも」
「ブルネリ殿……?」
「あの子が居なかったらどうなっていたか分からない。彼女の力がなければレスリア軍は押し切られていたでしょうね」
「…………」
本来ならば兵の士気に影響する発言を咎めるべきだ。だが彼女の言葉は事実であり、同時に絞り出したような声に彼女自身の動揺が伝わってくる。
初対面の時から年齢の割に達観しているという印象を抱いていたが、このような戦場に赴き死地に立った事で抱いた思いがあるのだろう。
彼女を揺らがせている根底を推し量る事は出来ない。しかしこれだけは伝えねばと思った。
「結果的にそうであったとしても、我が軍の死傷者が想定より少なく済んだのはブルネリ殿の力があってこそだと思っている。感謝している」
返事はない。しかし微かに頷き、私を見上げた彼女の表情は先程より晴れていた。