『読書』 (スターオーシャン5/ヴィクトル×フィオーレ)
「あら……」
私はソファに腰掛け、柔らかな表情で本のページを捲るヴィクトルの姿に気付き、彼を注視した。
読書をする姿も珍しいと思うけれど、それ以上に何かを慈しむような……そんな表情にどんな本を読んでいるのか気になって。
そっと近付き、手元を覗き込もうとした途端にパタンと本が閉じられた。
「どうかしたのか?」
「あなたがどんな本を読んでいるのか気になって。良かったら内容を教えてもらえないかしら」
「いや、これはその……」
言葉を濁し、視線を逸らすヴィクトルをじーっと見つめていると、やがて観念したように本の表紙を見せてくれた。
「地球の児童書だ。こちらの言葉にも慣れなければならないと思い、文字数が少なく、複雑な言い回しがないと思って選んだのだが……思いの外、話の内容が良くてな」
そう言った彼は本の内容を思い返したのか、口元に優しい笑みを浮かべる。
一体どんな話なのだろう。
私は隣に腰掛け、頬杖をついた。
「ねぇ、良かったら読み聞かせてくれないかしら。私もその話を知りたいから」
自分で読めば早いけれど、彼の声を聴きたくて。
小さく息を吐きつつも、ヴィクトルはページを捲って小さな物語を紡ぎ始める。
低く、穏やかな声音が優しく響き、私は物語の世界に導かれていった。
ツイッター企画、トライア創作会 2018秋 参加作品 お題「読書」