『短冊に込めた願い事』  (SOA/クロード×レナ)



 ラウンジに飾られた笹竹に、色とりどりの飾りや短冊が吊り下がっている。
 私は自分の願いを込めた短冊を手に、みんなの願い事に目を通した。
 いろいろな時代、様々な場所から集まっているから読めない言語もあるけれど、多くはクロードが教えてくれた地球の言葉で書かれていて私にも読める。
 平和を願う言葉、将来の希望や夢、自分の欲しいもの、そして願い。
 みんなが短冊に託した願い事から個性を感じられて、見ていて楽しくなる。
「地球には素敵な風習があるのね。私の願いも叶うといいな……」
 短冊を見つめ、書いた言葉を心の中で読み上げた。

『クロードとずっと一緒にいられますように』

 これから先、どんな事があっても彼の側にいたい。
 心からの願いを書いた短冊を笹に結び付けようとして、私は気付いた。
「この短冊、クロードの……」
 手元の近くにある青色の短冊。そこに書いてある名前に気付き、短冊の願い事に目を向けて胸がキュッと締め付けられた。

『この先もレナと一緒にいられますように』

 それは私と同じ願い事。
 一緒にいたい。今すぐに会いたい。
 私はクロードの短冊と同じ場所に自分の短冊を縛り付け、通信機を操作する。
 数秒の呼び出し音の後、応答したクロードがモニターに映り、私は笑った。
「あのね、クロード。すごいのよ! 短冊を飾りに来たんだけど、願い事が一緒だったの」
『願い事が一緒って、もしかして僕と? じゃあレナも……』
「うん。クロードとずっと一緒にいられますようにって書いたの」
『そうだったんだ……。嬉しいよ、ありがとう』
「私の方こそ、ありがとう。それでね、今、少し時間をもらっても大丈夫かな? ……クロードに会いたくなっちゃって」
『僕もだよ。今からそっちに行くから待っていて』
「うん、待ってるね」
 優しい声音を名残惜しく思いながら通信を切り、改めて七夕飾りを見上げる。
 色鮮やかな短冊と飾り。もう一度みんなの願い事に目を通す。
 たくさんの願い、希望、夢。
 みんな叶うといいな。
 そして私の願いを叶えてくれるのは――。
「――レナ!」
「クロード!」
 大好きで大切な人。
 息を弾ませて駆け付けてくれたクロードの胸に、私は思い切って飛び込んだ。