『邂逅』 (SOA/フィデル×ミキ+ダリル)
「父さん」
呼び掛けられ、珍しいと思いながら足を止めたダリルは息子に向き合った。
なんだと先を促せばフィデルは少し躊躇う素振りを見せ、やがて意を決した様子で口を開いた。
「あのさ、父さんが母さんと結婚したのはいつ頃だった?」
「なに……?」
あまりに唐突な質問に驚きながらも、なんとなく察しがつく。フィデルとミキは恋仲にある。故にそれに絡んでの事だろう。
ダリルは目を閉じ、亡き妻を思った。
出会った頃のこと。彼女に惹かれ、心を寄せ合い夫婦となり、そしてフィデルが生まれたあの頃を。
懐かしい。そう思いながら結婚した歳を思い起こすとフィデルに答えを返した。
「……そうだな、ちょうど今のお前ぐらいの歳だったな。お前が生まれたのが私が26歳の時で、結婚したのはその一年ほど前だったと記憶している」
「そうすると25歳で結婚してたのか……。僕と同じ歳だ」
驚いた様子で何事か思案するフィデルに、ダリルは目を細めた。
根が真面目なフィデルのことだ。ミキと歩む道を真剣に考えているのだろう。
自分が結婚した歳を聞いてフィデルが何を感じたのかは知らないが、どんな選択をしたとしても肯定したいと思う。
本来であれば、見届ける事が叶わなかったはずの子供たちの未来。
失われた親子としての時間を取り戻すような、この艦での穏やかな時間は夢物語のようで。
もう少し話を聞かせて欲しいと告げるフィデルに、ダリルは柔らかな笑みを浮かべた。